2011年2月8日火曜日

アポロの悲劇

バレンタイン時期になると、または「アポロ」を見るとたまに思い出すお話をひとつ。
昔私の知人にたいそうピアノの上手な人がいました。ジュニア部門のピアノコンクールをひかえつつ、その直前にバレンタインデーもあり心穏やかではない日々をすごしていたある年、この時期。
「やはりどんなに忙しくとも思いを伝えるチョコレートは手作りであるべきだ」
と考えていた彼女、しかしバレンタイン前夜深刻な問題に直面するのです。レシピ分量のミルクチョコレートが僅かに足りない!コンビニが現在ほど普及していなかった頃です。「どうしよう」・・・困り果てながら家中探し回り彼女は材料のチョコレートのほかに「アポロ」を見つけました。そう、あの小さな三角錐のチョコレート。二色二層に分かれたあのロングセラーチョコレート。それを見るなり彼女はためらいもなくそのミルクチョコレートの部分だけ包丁で切り離す作業を始めたそうです!
どのぐらいの足らずをそれで埋めようとしたのかわかりませんが切実な乙女心だったに違いありません。しかしこれが間もなく思いもよらぬ悲劇を生んだのです。
手元をあやまった彼女は人差し指に相当深い傷を負いました。縫うほどの怪我でした。ピアノコンクールは出場できず長い期間練習してきた甲斐がなくなってしまいました。家族やピアノの先生には怪我の本当の理由を話せず、自分にあきれるしかなかったそうです。
バレンタインの結末を聞いたのか聞かなかったのかその辺はもう忘れてしまいました。私にはこの笑うに笑えないなんともいえない不運ばかりが印象的だったのです。
大事な当日が2日以上続くときはみなさまもご用心ください。

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