2010年12月5日日曜日

夜な夜な話6 赤いろうそくと人魚 後編

娘が連れて行かれた夜、ろうそく店の戸をトントンと叩く音がしました。
「こんな夜更けにだれだろう」おばあさんは気味悪がって最初は戸を開けなかったのですが何度も何度も音がするのでとうとう出てみました。そこには女の人が立っていました。
「ろうそくをいただけませんか?」
おばあさんは不思議に思いながらも娘がおいていった赤いろうそくを渡しました。女の人はそれを受け取るとお金を払いました。しかし月明かりの下、おばあさんが見てみるとその人の長い髪の毛はびしょびょしょに濡れていました。ふと手のひらのお金をみてみるとそれはただの貝殻でした。
「だまされた」
お金のことばかり考えるようになっていたおばあさんは慌てて後を追いかけようと外にでましたが、もうその女の人の姿はどこにもみえませんでした。
その夜、赤いろうそくが山の神社にお供えされました。するとどうでしょう、今まで穏やかだった海が今までにないほどに荒れ狂いました。おじいさんもおばあさんも「この嵐ではあの子も無事ではあるまい」
と話しました。その夜、海で命を落とした者は数知れません。
 それから不吉な噂が流れるようになりました。山に赤いろうそくがともる夜は必ず嵐になって海に出た者は命を落とす、と。やがて海の守り神としてあれほどたくさんの人にお参りされてきたこの神社が急に不吉な神社だといわれるようになりました。嵐の夜、必ず神社には赤いろうそくが灯っているということです。これにより誰もこの神社にお参りしなくなりました。ろうそくも全く売れなくなりおじいさんとおばあさんは商売をやめてしまいました。これだけではありません、神社だけでなく町全体が不吉な町だと言われて
とうとう神社も町もなくなり、人もいなくなってしまいました。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿