2011年6月22日水曜日

夜な夜な話:パンを踏んだ娘 後編

インゲルはたちまち暗闇の奥底に沈んでいきました。インゲルの愚かな行動に神様が罰を下したのです。
その様子を一人の村の子どもが見てみんなに伝えました。
「ふん、親不孝なことをするからだよ」
「恩知らずの性根の曲がった子だよ」
村人達は口々に噂しました。
さて、暗闇には恐ろしい魔女がいてインゲルを動けなくしてしいました。体はどろだらけでお腹がすいても苦しくても動けません。
しかしインゲルの悪口を言い合う村人の中に一人だけインゲルをかわいそうに思い涙を流してくれる女の人がいました。その女の人は生きている間中インゲルがすくわれるように祈りをささげていました。やがてその女の人は年をとって死んでしまいました。それでも天国でどうかインゲルを暗闇からだしてあげてくださいと神様にお願いし続けました。
神様はその心に打たれインゲルを元の世界に戻してやることにしました。もう充分気持ちを入れ替えているころでしょうし。
しかしインゲルは人間として元に戻れたわけではありません。インゲルは小鳥になってもとの村にもどりました。そこからは他の小鳥達にひろったパンくずを上げて毎日をすごしました。自分はどんなにひもじくてもそうしました。そしてパンくずがようやく昔あのぬかるみに投げ入れたパンと同じ分量になったときです。インゲルのすがたはきれいなカモメになっていました。
本当に自由な姿になれたのでした。インゲルは自由に羽ばたいていきました。それからその村でインゲルの姿を見たものはいませんでした。  完      BY:アンデルセン

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